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生きている行事・四月の魚 [年中行事]

ミュゼ・ドゥ・ショコラ・テオブロマ.jpg
[引用]ミュゼ・ドゥ・ショコラ・テオブロマ


「四月の魚(しがつのさかな)」は、フランス語で「四月馬鹿(エイプリルフール)」をあらわします。

4月1日はエイプリルフールです。
この日は、一般的には、軽いいたずらで嘘をついても許される日と認知されていますが、「April Fool」ですから、いわゆる「おばかさん」という意味です。

その起源はいろいろあるようですが、フランスでは、「ポワソンダブリル(Poisson d'Avril)」、つまり、ポアソンは「魚」、ダブリルは「4月」で「4月の魚」を意味します。
そこから、魚は「サバ」のことを指しますが、4月にはどんなエサをつけてもサバが食いついてくることから、「おばかさんなサバ」が由来とする説が有名です。
他の起源をみてみると、おそらくこれは、後の解釈だとは思いますが。

しかし、フランスにおいて「4月」と「魚」は、「ポワソンダブリル」の語が示すように、深い関わりを持っており、4月1日にもなると、魚をかたどった魚肉のムースや、魚をかたどったケーキ、魚の形をしたチョコレートが店頭に並び、また美しくデコレーションされています。

ジェームス三木『結婚という冒険』(未來社、1986)の中に、「危険なパーティー」という小説が載っていますが、これを原作にした映画が「4月の魚」(1986)。
この中で、フランスでは4月1日を「ポワソンダブリル」といい魚の形をしたチョコレートを贈ると恋愛が成就するという嘘をつくシーンがあります。

この原作が先なのかどうかはわかりませんが、現在では、このチョコレートを贈るという行為から、いわゆるバレンタインデーのような意味が付加されてもいるとのことです。
つまり、4月1日に魚のチョコを好きな人に贈り、見事両想いになることができたらラッキーですし、もし片想いのままだとしても、それは「冗談」として軽く流せるというわけです。
告白したいけれど、断られたらどうしよう、という、恋する者の、なんとも悩ましく微妙な気持ちを解消できるイベントと化しているわけですね。


このように、ひとつの行事が、その時代ごとに解釈され、意味付けされてイベント化し、社会に浸透していく様がここから窺えます。

たとえば「卒業式に、制服の第2ボタンを好きな子に渡す」というイベントも、先日、某番組で、特攻隊を扱った映画「予科練物語 紺碧の空遠く」(井上和男監督、1960)で、監督の演出によって生まれたことが出ていました。
井上監督によると、第2ボタンにした理由は「ハートにいちばん近いところにあるから」ということで、それがいつの間にか、恋する少年少女の卒業式のイベントになってしまったわけです。


行事というものは、「生きている」ことがわかります。

現在行われている神事や行事の中でも、後世になって新たに加わえられた部分がたくさんあります。
皇室行事も、時代にあわせてかなり変更されている部分もありますし、すでに廃れてしまった行事を復興するために正倉院の宝物が宮内庁に貸し出されたり、その時の解釈が間違っていたために、いまだに原形とは異なる様式が用いられ、それがいつの間には正式な形として定着していったものもあります。

それで良いと思います。



このような行事の移り変わりを見ていくのも楽しいものです。




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