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小豆の力・ぜんざい [民俗・行事]

「ぜんざい(善哉)」は、小豆を砂糖で甘く煮た食べ物です。
関西では、小豆の粒が残っている状態のものを「ぜんざい」と呼び、こしあんでつくった汁粉のことを「おしるこ」と呼び、関東では、汁がないものを「ぜんざい」、汁があるものを「おしるこ」と呼ぶようです。
ぜんざいは、冬至の日に食べたり、鏡開きで食べたりと、年末年始には登場回数が多くなるスイーツです。

zenzai.png

小正月(1月15日)に小豆粥を食べると1年の邪気を払い、万病を除くという風習があります。
この風習は、『土佐日記』や『枕草子』にも描かれていることを、以前紹介しました。

十五日、今日、小豆粥煮ず。口惜しく、なほ日の悪しければ、ゐざるほどにぞ、今日二十日あまり経ぬる。
(土佐日記)


この小豆粥は、「七種粥」の風習を原型としており、『延喜式』巻第40に

正月十五日供御七種粥料。米一斗五升・粟・黍子・稗子(ヒエ)・ミノ・胡麻子(ゴマ)・小豆各五升、塩四升


という記述が見え、「七種粥」の材料として「小豆」が納められています。

6世紀頃の中国の湖北省・湖南省地方の習俗を伝える『荊楚歳時記』には、冬至に小豆を粥にして食します。

冬至の日、日の影を量り、赤豆粥を作りて以て疫を祓う。


冬至の日は、1年でもっとも昼が短く、夜が長い日です。
太陽の力がもっとも弱まる日であり、2012年の今年、金環日食を経験した人ならば誰もが体感したと思いますが、太陽が隠れることで気温が下がり、ある種の「異様さ」をおぼえました。天の岩戸神話における、天照大神がお隠れになったときの神たちの混乱を例に挙げるまでもなく、月と太陽の引力が地球に大きく作用することは、潮の満ち引きに限らず、科学的に証明されているところです。

太陽の力がもっとも弱まる日に「赤豆」を食すのは、自らの体にその霊力をこめようとする考えがあります。
豆は、節分で鬼を祓うために使われるように、その小さな穀物から生命がはぐくまれることから、霊力の源とされ、また、「小豆」ではなく「赤豆」と記すのは、赤がもつ邪を祓う力を期待したからです。
なぜ、赤は邪を祓うのかといえば、鬼は陽に属しており、赤色になぞらえられているからです。
『芸文類聚』「儺」の項、すなわち鬼を祓う儀礼には、鬼を祓うことを

赤疫を逐う


と記しており、「赤疫」とは鬼のことを指します。つまり、「赤=鬼」を祓うために、「赤」を用いるのです。
また、赤は血の色であり、生命の源、生命そのものでもあるのです。

その小豆を、正月にも食します。

正月十五日作豆糜
『荊楚歳時記』


赤豆の効能としては、利水除湿、消腫解毒、清熱利尿などです。
中国の医書「肘後備急方」には、「大腹水病」を治す処方として

常食小豆飯小豆汁鱧魚佳也


とあり、「小豆飯」や「小豆汁」が良いとされています。
この「大腹水病」という病気は、「愚管抄」に

法皇は崩御ある。前の年より御病ありて少しよろしくならせ給などきこへながら、大腹水病と云御悩にて、御閉眼の前日まで御足などはすくみながら、長日護摩御退転なくをこなはせてをはしましけり。


とあり、後白河院が悩まされ続けた病気でもあります。


霊力がこめられた小豆は、邪を祓い、そして体にも良いものであることから、無病息災を願うお正月にはぜひとも食べたいものです。




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