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お盆行事・精霊馬 [年中行事]

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お盆です。
現在は、8月15日前後を「お盆」として、墓参りをしたり故郷に帰省しますが、元々、陰暦7月13日から15日ごろを中心にして行われる先祖祭りのことで、明治に陰暦(旧暦)から陽暦(新暦)に変わったことから、現在の8月に行なわれるようになったと考えられます。

さて、この「お盆」行事の由来については、主に2説あります。
(1)仏教の盂蘭盆会を由来とするもの。 (2)日本古来の春・秋の魂祭りを由来とするもの。

(2)の説は、柳田国男『先祖の話』にあるものですが、春・秋の祭りといえば、日本のみならず、農耕社会においては、春の予祝と秋の収穫に関する行事は今も残っているかと思います。つまり、穀物の生命に関する祭祀が、やがて、その穀物によって生かされる人間の生命と結びついて、祖先信仰などと関連づけられる基盤ができあがったのでしょう。
これを基盤にして、仏教の盂蘭盆会が習合し、現在の「お盆」行事になったと考えられます。

盂蘭盆会は、盂蘭盆経による仏事です。
盂蘭盆は、サンスクリット語の「ウランバナ」の音写語で、「倒懸(さかさにかかる・さかさづり)」を意味しており、つまり「逆さまに吊り下げられるような苦しみにあっている人を救う法要」という意味です。『盂蘭盆経』には、

安居の最中、釈迦の弟子で、神通第一の目連尊者が亡くなった母親の姿を探すと、餓鬼道に堕ちているのを見つけた。喉を枯らし飢えていたので、水や食べ物を差し出したが、ことごとく口に入る直前に炎となって、母親の口には入らなかった。
哀れに思い、釈迦に方法を問うと、「安居の最後の日に、飯・百味・五果(李・杏・棗・桃・栗)汲灌・盆器・香油・錠燭・床敷・臥具をととのえ、すべての比丘に食べ物を施せば、母親も三塗(地獄道・畜生道・餓鬼道の三悪道)の苦を出て解脱し、その施しを受けることができるだろう」と答えた。その通りに実行し、母親を救った。


といったことが書かれています。
『盂蘭盆経』は、インドのものではなく、仏教が中国に伝播する間に成立したものといわれますが、日本には飛鳥時代には盂蘭盆会が導入されていることが確認できます。

季節柄、夏には疫病や災厄が蔓延し、死者が続出していることとも関係があるでしょうね。
京都・祇園祭も、元々は「御霊会(ごりょうえ)」といい、都に蔓延した疫病や災厄の正体を、政変の犠牲となり、非業の死を遂げた怨霊の仕業とし、その魂を慰撫し鎮める祭礼ですし、そういう魂を祭る季節であったともいえます。

お盆といえば、13日の朝に、霊を迎えるための精霊棚(しょうりょうだな)を作り、台の上に真菰(まこも)で編んだゴザを敷いて、精霊棚の奥中央に先祖たちの位牌を安置します。
位牌の前には、なすやきゅうりで作った牛や馬を供えます。
そして、近所にお墓がある場合は、お墓の掃除と、先祖が通りやすいように、お墓から家までの道の草刈をしたりします。また帰る家がわかりやすいように、盆灯籠を吊ったり、迎え火を焚きます。
迎え火を焚く場所は、家の門口や庭先、道の辻、墓地などが一般的に多く見られますが、このときに使われるのは、一般には「苧殻(おがら)」という麻の茎を乾燥したものが多いです。

14日か15日に僧侶を招き、お経や飲食の供養をします。
お供えものは、地域によって様々ですが、献立は毎日変わり、家人も同じもの食べます。
おおまかには帰ってきた先祖が、環境の変化になじみやすいような配慮をした献立が主でしょう。あの世から着いたばかりの13日は、あの世の味に似せて精進系、それからだんだんと現世の味に変えていき、またあの世に戻っていく16日は、あの世の味に戻していく、という感じです。

16日には、迎え火を焚いたのと同様に、送り火を焚くことも広く行われています。京都の五山の大文字(大文字焼き)が有名ですね。

なお、お盆には、きゅうりの馬となすの牛というものをつくりますが、この由来はあまりわかりません。
いわゆる「精霊馬(しょうりょううま)」と呼ばれるもので、「先祖の乗り物」などといわれますが、元々は、「真菰の馬(まこものうま)」といった、真菰で作っていたと思われます。
以前には真菰で精霊馬を作っている地域もあったといいますし、おそらく、そうではないでしょうか。

ここからは単なる私見(憶測)になりますが。

「真菰の馬」といえば、七夕の夜に織り姫と彦星が馬に乗って再会できるようにと願い、真菰で作った1対の馬のことをいい、別名「迎馬(むかえうま)」とも呼ばれますが、精霊棚を作るときに真菰で編んだゴザを敷きますが、その時に一緒に作ったのでしょう。

しかし、それがやがて、棚にお供えしていた季節の野菜、つまりウリ科(きゅうり・なす)の野菜に変わっていったと考えられます。
きゅうりやなすに、迎え火用に用意した苧殻の足を作るほうが簡単といえば簡単ですし、真菰の「菰」に「瓜」の文字が入っているなどと、強引ながらも、言葉遊びのような理由付けもできなくもありません。
実際に、真菰は食用もありますし、マコモタケなどは、なかなかぷりんとした形です。収穫時期が9月下旬以降なので、マコモタケと、きゅうりとなすの関係はありませんが。

こういう風習を残していきたいものですね。




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タグ:お盆 精霊
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